#4 日本の地域資源・技術を活用したクラフトマンシップ 〜DENTO〜


中国地方は本州西部に位置し、瀬戸内海に面した山陽地方と、日本海に面した山陰地方からなる地域である。豊かな自然や神話、歴史文化に恵まれ、日本ならではの風景や暮らしが今なお色濃く残されている。
近年では、広島県・岡山県・山口県をはじめ、中国地方全体で外国人延べ宿泊者数が過去最高を更新するなど、海外からの注目も高まっている。こうした中、地域に受け継がれてきた資源や歴史、ものづくりの技術を強みに、新たな価値を創出しながら海外市場へ挑戦する企業も増えている。
CO:Designチームは、JETROとパーソンズ美術大学が共同で実施したワークショップに参加した中国地方を代表する5社を訪問した。各社のものづくりの現場を見学するとともに、経営者や職人が受け継いできた技術や哲学、そして海外市場への挑戦にかける想いに耳を傾けた。
本シリーズでは、各社のものづくりに込められた価値や地域とのつながり、さらに海外展開への取り組みを通して得られた学びや気づきを紹介する。
伝統工芸株式会社(DENTO)(広島県)
〜人々の生活に寄り添う、フレーム屋さんの家具〜
広島県の東部に位置する府中市は、福岡県大川市、北海道旭川市と並び、日本の家具三大産地の一つとして知られている。江戸時代から箪笥づくりが始まり、職人たちによって、釘などに頼らず、木材同士を精密に組み合わせる高い木工技術が受け継がれてきた。
伝統工芸株式会社(DENTO)のものづくりは、家具ではなく、書を飾るための額縁や茶道具、屏風、和のフレーム、茶室の中のインテリア一式から始まった。同社が拠点を置く上下町は、かつて石見銀山街道沿いの宿場町として栄えた場所だ。石見銀山は、ユネスコの世界遺産に登録されており、16〜17世紀には世界の銀産出量のおよそ3分の1を生産していた。
江戸時代には幕府の直轄地となり、銀の輸送や管理を支える中継地点として、人や物、情報が行き交った。こうした交流の中で、上下町を含む府中市には、古くから書道文化が根づいていき、書を美しく飾るための額縁や屏風などが求められるようになった。DENTOのフレームづくりは、そんな土地の歴史と文化の中で育まれてきた。


額縁の加工技術を活かした家具作り
時代の変化とともに額縁の需要が減少するなか、DENTOはそこで培ってきた技術を家具づくりへと展開。2012年から、本格的に家具づくりをスタートした。
日本の住環境に合わせ、主張しすぎず、どんな空間にも自然に馴染むデザインを大切にしている。木ならではのぬくもりや、やさしい質感を生かしたスツール、ソファ、テーブルなどを手がけ、OEMに加えて、オリジナルブランドの家具もインテリアショップやセレクトショップなどで展開している。その家具づくりにも、額縁づくりで培われた技術が息づいている。
そのひとつが「留め加工」だ。木材を45度に切り、2つの部材を組み合わせることで、正確な直角をつくる。わずかでも角度がずれれば、美しいフレームにはならない。すべての角がぴたりと合うことで、木のラインが途切れることなくつながり、端正な美しさが生まれる。
DENTOは、この精密な加工技術を家具のデザインにも生かしている。大阪・関西万博に向けた「CO-DESIGN CHALLENGE 2024」では、留め加工の技術を応用した木製スツールを制作。長年受け継いできた技術に新たな役割を与え、額縁から家具へとものづくりの可能性を広げている。


産地として地域の魅力を発信
DENTOの取り組みは、自社の家具づくりだけにとどまらない。家具産地である府中では、地域の企業が連携し、インテリアやクリエイティブに関わる人々に向けたオープンファクトリーやデザイナーセミナーなどを開催している。
DENTOでも、地元の森林から工場での製造工程までを実際に見てもらう、体験型の工場見学を実施している。木が育つ場所を訪れ、その木がどのような工程を経て製品になっていくのかを知ることで、素材とものづくりのつながりを伝えている。
こうした活動を通じて、ものづくりへの理解を深めるだけでなく、新たな仲間やアイデアが集まるきっかけをつくる。受け継いできた技術を守るだけではなく、地域の森林や産業、人をつなぎながら、次のものづくりへとつなげていく。それもまた、DENTOが目指す持続可能なものづくりのかたちだ。

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