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#6 日本の地域資源・技術を活用したクラフトマンシップ 〜WEAVE HARISA〜

執筆者の写真: CO:Design & Strategy
CO:Design & Strategy
8月31日
読了時間: 5分


中国地方は本州西部に位置し、瀬戸内海に面した山陽地方と、日本海に面した山陰地方からなる地域である。豊かな自然や神話、歴史文化に恵まれ、日本ならではの風景や暮らしが今なお色濃く残されている。


近年では、広島県・岡山県・山口県をはじめ、中国地方全体で外国人延べ宿泊者数が過去最高を更新するなど、海外からの注目も高まっている。こうした中、地域に受け継がれてきた資源や歴史、ものづくりの技術を強みに、新たな価値を創出しながら海外市場へ挑戦する企業も増えている。


CO:Designチームは、JETROとパーソンズ美術大学が共同で実施したワークショップに参加した中国地方を代表する5社を訪問した。各社のものづくりの現場を見学するとともに、経営者や職人が受け継いできた技術や哲学、そして海外市場への挑戦にかける想いに耳を傾けた。


本シリーズでは、各社のものづくりに込められた価値や地域とのつながり、さらに海外展開への取り組みを通して得られた学びや気づきを紹介する。


WEAVE HARISA(岡山県)

〜明治から受け継がれる針作りを世界へ〜


岡山県北東部に位置する美作市(みまさかし)は、緑豊かな山々に囲まれた、自然と歴史が息づく地域である。そんな美作市の一角に、針づくりの技術を明治時代から受け継ぐ小さな工場がある。


ウィーブハリサは、創業以来「針のスペシャリスト」として、ものづくりを続けてきた。ニットなどの繊維製品や、漁網・農業用ネットなどをつくる工業用編み機に欠かせない「編み針」をはじめ、ヤーンガイド*や手芸用の特殊針など、さまざまな用途に応じた精密な金属部品を手がけている。


*編み機や繊維機械の中で、糸(yarn)を正しい位置へ導くための部品




そのルーツをたどると、1905年に大阪で創業した針メーカーにさかのぼる。日本の繊維産業の発展とともに、同社は工業用・家庭用の編み機に使用される針を製造してきた。事業の拡大に伴い、現在WEAVE HARISAが拠点を置く岡山県にも工場を設立。しかし、その後、繊維製品の生産拠点が徐々に海外へ移転したことで、国内における針の需要は減少していった。


2001年、同社の前身となる針メーカーは廃業することとなった。その一方で、長年同社の針を使用してきた取引先からは、供給を続けてほしいという声が上がった。そこで立ち上がったのが、当時、岡山工場で働いていた米戸進氏である。機械や設備を引き継ぎ、同年にWEAVE HARISAを創業。工場の閉鎖とともに途絶えかねなかった針づくりの技術を、次の時代へとつないだ。現在、そのものづくりを受け継いでいるのが、進氏の息子であり、2代目代表を務める米戸潤氏である。



米戸潤氏と米戸進氏の親子でつなぐビジネス
米戸潤氏と米戸進氏の親子でつなぐビジネス

産業を支えてきた技術を、私たちの日常へ


近年、WEAVE HARISAは、長年培ってきた針づくりの技術を新しい領域へと広げ始めているそのひとつが、一般消費者に向けたテーブルウェアである。


例えば、針づくりの技術を生かして生まれたフードピック。細いステンレス素材にプレス加工を施し、食べ物を刺しやすく、抜けにくい形状へと仕上げている。持ち手には、地元の木工職人が手がけた木製パーツを組み合わせた。さらに、長年製造してきた編み針の形状を生かしたドリンクマドラーや、小さなフォーク、ナイフ、スプーンといった「マイクロカトラリー」へと製品の幅を広げている。


一見すると、工業用の編み針とテーブルウェアはまったく異なるものに見える。しかし、細い金属を曲げ、削り、磨き、用途に合わせて形を整えるという技術は、どちらにも共通している。産業の裏側で長年使われてきた技術が、形を変え、今度は私たちの日常の中へと入っていく。



マイクロカトラリーセット
マイクロカトラリーセット
ドリンクマドラー
ドリンクマドラー
すいかの形の持ち手のフードピック
すいかの形の持ち手のフードピック


海外とのコラボレーションを通じて、新たなアイデアを形に


同社は自社ブランドの立ち上げとともに、国内外のさまざまな人々やコミュニティとの連携を通じて、受け継がれてきた技術を現代のニーズに合わせ、新たなものづくりへとつなげることにも力を入れている。


その一つが、ハワイの伝統文化であるレイづくりに使用する針の開発だ。ハワイでレイづくりを学び、日本でその文化を伝えている顧客から、「花を傷めずに使える針がなかなか見つからない」という相談を受けたことがきっかけだった。同社はその要望に応じて試作品を製作。長年培ってきた針づくりの技術を、これまでとは異なる用途へと展開している。


さらに、海外との新たなコラボレーションも生まれている。


「もう少し手仕事に関わる針をつくりたい」と考えていた米戸氏が、ラッチフックを使った手芸の可能性を探る中で出会ったのが、イギリスで活動するRoslynさんだった。元小学校の美術教師であるRoslynさんは、一般的なかぎ針や決められたパターンを使った編み物に苦労する子どもたちを目にしてきたという。


そこで二人は、初心者や子どもたちでも、より簡単に、自由に手仕事を楽しめる針を共同で開発した。現在Roslynさんは、ワークショップやイベントを通じて、子どもや初心者を中心にWEAVE HARISAの針を使った手仕事の楽しさを伝えている。今後はパッケージデザインなどにも力を入れ、クロシェキットとして商品化することも検討している。


「AIやデジタルの時代だからこそ、子どもたちには、自分の手で何かをつくる楽しさを知ってもらいたい」と米戸氏は語る。


誰かの「こんなものがあったら」というアイデアに耳を傾け、自社が培ってきた技術と掛け合わせながら、新しい形へと変えていく。WEAVE HARISAは、明治時代から受け継がれてきた針づくりの技術を守るだけでなく、国内外の人々との出会いやコラボレーションを通じて、その可能性を新たな市場、そして次の世代へと広げている。



Roslyn氏に会いに、イギリスまで飛んだ米戸氏
Roslyn氏に会いに、イギリスまで飛んだ米戸氏
Roslyn氏が出版したブックレットとWEAVE HARISAのかぎ編み用の針
Roslyn氏が出版したブックレットとWEAVE HARISAのかぎ編み用の針


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